H28.5.20

炎天下の中
無謀な遠出をして
疲労困憊になった
車の中で
おとしよりたちと
食べる
アイスは
いつも最高だ

H28.5.17

話していないと
すぐに帰ってしまう
おばさんに
はじめは
何を話そうかと
少し億劫な気持ちで
お付き合いして
三年が経ち
気づけば
誰にも言えないような
抜き差しならない
じぶんのことを
まっさきに
相談したい
大切な人に

H28.5.10

だれともいたくないと
二年前は
一人の和室で
電気も消して
ほとんど横になっていたな
そういえばと
目の前で
他の二人のおばあさんと
口汚く
罵り合っている
そのおばさんの姿をみて
微笑ましく
思い返せたら
いいのに

H28.5.9

好天続きのあとの
雨模様だったので
おそらくそうだろうなと
思っていたけど
やっぱり
誰もが
よく眠る
一日だった

H28.5.8

家族で
奈良の山奥の公園へ
行った帰りの道すがら
どこかわからない集落の
小さな古びた家に
赤ちゃんをあやす
若い夫婦の姿を
みかけたとき
当たり前のこととはいえ
じぶんの知らないところで
じぶんの知らないひとたちが
それぞれに暮らしている
というだけで
なぜか動揺してしまった

H28.5.7

そちらでは
いつもご飯をたくさん
食べてくるので
ほんとうに
おいしいものを
作ってくださって
いるのですねと
おばあさんの小食に悩む
ご家族からの
連絡帳のことばに
実は
味の善し悪しというより
お世話好きのおばさんが
その日来ているかどうかで
おばあさんの
食べる量が
まったくちがうのですよと
返事を書こうとしたが
やめて
ただ
ありがとうございますと
だけ書いた

H28.5.6

あの頃はよかった
そんなときが
振り返っても
ひとつもないというのは
そういえば
なにも変わってないなと
あのときもそうだったと
そう思えると
いうことは

H28.5.5

職員のみなさんも
小さなお子さんが
いる方ばかりなので
この連休中
3日ほど
嫁と子供とお年寄り
という面子で
過ごさざるえなくなり
来ている方々と
そのご家族も含め
力を合わせて
なんとか一日を
無事に終えようという
不思議な団結力が芽生え
子どもたちも
そんじょそこらの
アミューズメントを
遥かに凌駕する
スリルを味わったと
そういうことに
したいのに
来年こそは必ず
黄金の連休をと
去年も言っていたことを
どうしても
思い出してしまう

H28.5.3

ある意味
一番の
要介護状態だった
生まれたての息子が
2歳半になり
保育所に8ヶ月通った結果
久しぶりに来たデイの場で
その場にいる誰よりも
介護職として
活躍をするなんて
あの頃のじぶんに
教えてあげたい

H28.5.2

一日中
歌い続ける
おじいさんが
いるので
こんなに
暑い日でも
窓を閉め切りに
していたから
一足先に
凡は真夏

H28.4.28

おしゃべりのおばあさんが
その場にいると
怒ってしまう
おばあさんが
毎日来ているので
もちろん
女性は基本的に
おしゃべりなので
そのおばあさんが
怒らないように
おしゃべりの方々の
居場所を
おばあさんの動きに合わせて
その都度移ってもらう
という
歩行訓練
そういうのだめですか

H28.4.26

毎度繰り返される
そのおじいさんの昔話も
一年もたつと
ぼくたちや他のおとしよりが
聴きやすいような
話にいつのまにか
少しずつ変わっていて
つまりは
週三回一年間
いまここにいる
ひとたちのあいだにだけ
腑に落ちるような
そのおじいさんの過去を
皆で手作りしてきたということ
それが嘘か本当かなんて
それはおまえ
あれだぞおまえ
野暮野暮野暮♡

H28.4.25

昼下がり
僕以外の
三人のおばあさんが
うとうとし始め
ついには眠ってしまうと
こんななんでもない
平屋の八畳の和室で
おおらかな自然に
包まれたかのよう
この後その自然が
猛威をふるうまでの
つかのまの時間の

H28.4.22

出会って4年になる
いつもは無口な
おばあさんに
帰りの送迎の車中で
不意に
「ところで
おたくさんは
誰ですか」と
尋ねられた時
すぐに応えることが
できなかった

H28.4.21

ひとりよがりに
なりたくないから
書く
ことばにしたことだけが
経験となりうるのなら
おなじことのまわりを
ぐるぐると
まわりながら
なんどでも

H28.4.20

ひととひとが
なにもないまま
そばにいて
あいてのことを
気にかけないでいる
ことのほうが
むずかしいみたいなので
あらゆる「あらかじめ」を
いったんやめた

H28.4.13

あなたはそこで
なにをしているのかと
問われたら
「家族」をしているのだと
こたえる
誰としているのかと
問われたら
一緒にいるひとたちとと
こたえる
どんなひとたちなのと
問われると
なんでも聞き流してくれる
ひとたちだと
こたえる
とりあえずは

H27.1.23

仕事終わり
珍しく職員と
立ち話をしていて
「こんな感じの毎日が
ただ続けばいいと
思っている」
ということばが
思わず口をついて
出たことに
そうなんやと
我ながら驚く

H27.1.22

まさかのこの冬二回目の!
子供のインフル騒動で!
実は今夜で四泊目!
職場で一人で節電で!
寒くて暗い部屋のなか!
まんじりともせず寝ていると!
ばっちり絶望できるので!
そんな方にはおすすめdeath!!!

H27.1.21

凡に通いだして
二年になるおじいさんに
ベッドからの起きしな
「メガネどこいった」と
聞かれたので
「いや、鼻に掛かってますよ」と
返事をしたら
「うはっ」と
初めて声をあげて
笑ったので
楽しい気持ちになった

H27.1.20

ほんとうに
こんなことが
したかったのかと
思ってしまう日も
もちろんある

H27.1.19

虫歯の痛みで
昨夜一睡もできず
どうなることかと思ったが
午前中から
次々と体調不良により
パタパタとみなが倒れ
昼食時には
ひとりのおばさん以外
うちの娘も含め
みんな寝ているという
なかなかの状況に
なったお陰で
なんとか一日を
終えることが出来ました

H27.1.18

みたことも
ふれたこともない
「誰か」からの
要請には
今後
一切
応じない

H27.1.17

楽天的な啓蒙や
過激なロマンが
胸のうちに
湧き上がっては
へし折れて
いいかげん
何もかもに嫌気が差し
だからとて
妥協や調和が何よりと
「目に見える現実」に
擦り寄ってみても
日々は腐臭にまみれている
たまたま介護を生業とした
十五年前も今も
そしてこれからも
目の前の風景は変わらない
だこらこそ
やろう
まだやろう

H27.1.16

二人のおばあさんは
入院してるひとのお見舞いに
二人のおばさんは
それぞれの理由で
スーパー銭湯に
もう一人のおばあさんは
凡でお風呂中
ぼくはといえば
さっきお風呂を手伝った
おじいさんが寝ている
ベッドのよこで
昼ごはんの野菜を刻む
コンコン
という音を聞きながら
ウトウト

H27.1.15

みなで談笑していて
おばあさんが
うっかりトイレを
失敗したが
その場にいる
すべてのひとたちが
それをなかったかのように
さりげなく振舞おうと
しているとき
大切な何かが
信じるに足る何がが
みなのあいだに
ぼんやりみえた

H27.1.14

痰の絡みの
ひどいおばあさんが
咳をする度に
おどろき
ついには怒って
つかみかかろうとする
おじいさんも
一年前には
おなじ状況で
誰よりもやさしく
咳をするそのひとを
気遣ってくれていたと
思い出したとき
ほんとうに
さみしいのは
いったい
だれなんだろう

H27.1.13

プライドが高くて
人付き合いが苦手だと
事前になんども
聞かされていた
おばさんが
エサ箱の骨をとると
いきなり噛み付いてくるという
犬のおもちゃを
風呂帰りのおばあさんの
座席の前に
こっそり仕掛けて
おばあさんが
びっくりするのを
今か今かと目を輝かして
待ちわびている
その顔をみながら
まあそんなものだけど
女性はほんとうに
こわいなあと
しみじみ

H27.1.12

昼ごはんのあと
おもむろに玄関に向かった
おじいさんに
家に帰ろうと思ったのではなく
トイレに行こうと思ったと
思い違いしてもらおうと
いやらしい期待をしながら
一旦トイレに座ってもらい
そのままいっしょに
元いたソファに帰って
ほっと一息ついて
隣に腰掛けた
そのときに
ことばにならないつぶやきが
きこえはじめ
それがある瞬間
「ちきしょう」と
聞こえてしまったので
おじいさんが帰るまで
その場から
身じろぎできないまま
うごけないまま

H27.1.11

床に散らばった
小銭を数えるために
下を向いてばかり
いるあいだにも
よくいきるための
手がかりは
目の前を
通り過ぎていく

H27.1.10

ぼくとあなた
おたがい
どこまでいっても
ちがうものどうしが
いっしょにいようと
するとき
たいせつなのは
寛容さではなくて
またちがう
べつの誰かが
そばにい続ける
ということ
らしい

H27.1.9

結婚記念日は大丈夫やった?
記念日は大事やよ
あそうそう 
うちも結婚六十周年を迎えたの
温泉でも行こうかと
思っていたけど
お父さんこの調子じゃね

いつものおじいさん
一昨日元気なかったけど
大丈夫でした?
そう良かった
あ そう
六十周年なんてすごいですね
あら そうですか
それだったら
このあいだお母さん連れて行った
温泉がいいと思いますよ
詳細メールしておきますね

あ おかあちゃん?
なんか温泉ええとこ
あるらしいで
でもひとつだけお願いが
あるんやけど
うちの家族も一緒に
行っていい?
嫁さんが誕生祝い
旅行がいいって言うてんねん
あ そう

ありがとう

H27.1.8

名前もなにも
まったく分からないし
お互い教え合っても
すぐに忘れてしまうのに
すぐに忘れてしまうから
穏やかな午後

H27.1.7

おじいさんの
トイレのお手伝いを
していたら
どこで言い含められたのか
今日は
ぼくの嫁の誕生日で
且つ結婚記念日で
あるらしいことを
なぜか怒り口調で
聞かされるが
なにはともあれ
すっぽかすという
最悪の事態は
免れた

H27.1.6

長男がまだ冬休みで
久しぶりに凡で過ごしたが
ほぼ一職員として
扱っていることに
途中で気づくも
特にどうということは
なかったので
そのままこき使った

H27.1.5

正月明けて
どうかなと気を揉んでいた
おじいさんが
やっぱり元気が無く
車に乗り込んだ後も
ぐったりしていたので
今年一年もうだめかも
くらいのきもちに
なっていたとき
電線工事のガードマンが
大きな赤い「止まれ」の旗を
軽やかに振っているのが
目に入ったので
「闘牛士か」と
つぶやいたときに
「ぐはは」と
おじいさんが笑ったので
今年もいける
おれはやれる

H26.12.23

帰りの送迎で
ある場所を通るとかならず
「家まで大分遠いなあ」と
いつも言う
出会って半年の
おばあさんが
今日はじめて
「案外近いもんやな」と
言ったとき
とても嬉しかった

H26.12.22

目が覚めて
窓の外が一面
雪景色なとき
やったと興奮したことが
じぶんにもあっただなんて
にわかに
信じられない

H26.12.21

取るに足らない
ことばかりが
思い出されるときは
うどんが
食べたくなる

H26.12.20

たまにしか会わない人と
話したあとはいつも
今じぶんが
なにをあきらめて
なににしがみついているのか
なんとなく
分かるのがいい

H26.12.19

思ったより
日差しが出てきて
寒さが和らいだ頃
四人のおばあさんの
誰からともなく
散歩に行こうと
言い出したのに
公園に着いた途端
寒いから帰ろうと
例のごとくやいやい
言い始めたので
しばらく無視していたら
一緒に来ていた赤ちゃんに
「寒いなあ。風邪ひくなあ」と
ぼくに聞こえるように
言うのはほんとうに
ずるいと思う

H26.12.18

おやつのあと
すこし部屋の空気が
殺伐とし始め
次に何を口にしても
ろくな結果にならないと
分かっているので
しばらく黙っていると
急に目の前のおばあさんが
「キムタクって知ってる?」と
聞いてきたから
ぼくの完敗

H26.12.17

あまりの寒さのせいか
心房細動で倒れる人
トイレがうまくいかない人
急に怒り出す人等々
なかなか落ち着かない
一日の最後に
せめておんなのひとに
なぐさめてもらうと
部屋を何度見渡しても
おじいさんだらけの
水曜日

H26.12.16

いつも
「あんたのところの
風呂場で溺れて死ぬ」と
言っていたおばさんが
今日初めて
ほんとうに
死のうとしたと
お風呂を手伝っていた
職員から聞いたとき
まず怒りがこみ上げ
次に
その怒りがどこからきたのか
分からずに
戸惑ったまま
でも足は
そのおばさんの方へ
向かっていく

H26.12.15

長女に続き
長男も罹患したので
嫁と赤ちゃんを
家においての
出勤であったが
職員が少ない分
やることがはっきりする
「おとうさん」で
いなくてもよい等々
ほんとうに
気軽な一日でしたー

H26.12.14

どちらでもないと
いうのは
なんでもいいと
いうことではなくて
抽象的なものごとから
できるだけ身を離し
事実性だけを
できるだけ精確に
つかもうとする
態度や意志の
ことですと
言いたかっただけなのに

H26.12.13

深夜
ベランダで
タバコを吸っていると
空き缶が
風で飛ばされる
カンコロという
音が
やけに響いていた

H26.12.12

娘がインフルエンザに
かかったので
職場で寝泊まりするのは
今年二回目

H26.12.11

雨のなか帰りの送迎
おばあさんと
二人きりになり
ここは宮崎県ですか
ここは大阪ですよ
というやりとりを
かれこれ十回くらい
繰り返した頃に
急に晴れ間が覗き
「田端義夫は好きよ」と
おばあさんが言ったので
便利な世の中になったもんだ
iPhoneを
カーステレオにつなぎ
YouTubeで
「かえり船」をかけて
二人で熱唱していたら
道を間違えた

H26.12.10

昼過ぎ
そのひとに
いつしか抱え込んでいて
でも
ひたすら飼い慣らしていた
悪意が
ふとした拍子で爆発し
いつもは直前のことすら
忘れてくれる
そのひとが
帰るまで延々
棘のある表情で
ぼくのことを睨む
その目に
映っていたじぶんが
ほんとうに嫌で
どう肯定しようか
ぐじぐじ考え続け
もうこんな時間

H26.12.9

向き合うと
嫌になったり
目をそらさなくては
いけないときは
となりにいて
なんでもいいから
同じものを
眺めるように
なにかを合わせているうちに
たまに目があって
ちょうどよかったり
する

H26.12.8

いつもいるひとが
いないので
時間のあちこちに
すきまがうまれ
急な寒さに驚いて
うっかり咲いていた
庭の一輪のつばきを
眺めてばかりの
一日

H26.12.7

長女とふたりで
昨日転んで骨折した
おばあさんの
病院にお見舞い
相部屋のベッドに
眠っているそのひとが
あまりにふだんと
様子がちがうので
長女ははじめ誰だか
分からなかった様子
帰りの車中で
「おばあさんどうなるの」と
聞かれたので
「すぐに元気になるよ」と
言ったからには

H26.12.6

休みの日の
夜にかかってくる
仕事場からの
転送電話は
一瞬取るのを
ためらう
結局
取って
やっぱりかと
おもうのだけれど

H26.12.5

二年間毎日いっしょの
おばあさんが
朝自宅で転んで
病院に行くとの
連絡があり
昼過ぎ
息子がなんども
食べたものを吐き
なんとか帰りの
車に乗り込み
しばらく走ってから
おばあさんの家の鍵を
凡に置いてきてしまったことに
気づいた瞬間逆に
ほんとうに久しぶりに
まったくなにも考えずに
驚くくらい新鮮な気持ちで
助手席のおばあさんと
はなすことができた

H26.12.4

話すことの大半が
ほとんど自分のことの
おじいさんに
いつもはできるだけ
ながく寝ていてほしいけど
話すことの大半が
ほとんど自分のこと且つ
自慢か愚痴のおばあさんが
来ているときは
できるだけ起きて
ふたりで思う存分
話し合っていてほしいと
身勝手ながら
つくづく思った
一日でした

H26.12.3

おやつ前のじかん
和室で横になっていた
おじいさんの目が
急に開き
その目がぼくと合った瞬間
かっと見開かれ
なにごとかとおもったら
「旧年中はいろいろと
お世話になりました
本年もよろしくおねがいいたします」
となぜか新年の挨拶を
ていねいにはじめたので
戸惑いつつも
これはチャンスだとおもい
「さあ、おやつなので
起きましょうか」と
肩に手を回した瞬間
「触るな!ほっとけ!」と
怒号が飛び
そのあまりの落差に
膝から崩れ落ちた

H26.12.2

こうも寒くなると
家に帰りたくなるのは
道理なので
いつもよりはやく
おばあさんが
帰りたいという
きもちになり
あと二時間
あと一時間と
なんとかやり過ごし
おやつを食べ終えた時点で
おたがいやれやれと気が抜けて
何気なく流した
「上海帰りのリル」が
思うより馬鹿受けし
こんどは
「わたしは帰りませんよ」に
付き合う羽目に

H26.12.1

ここがトイレで
今便座に座っていて
さっきからあなたが
そわそわとしているのは
じつは便秘のせいなので
ここはすこし
頑張ってみましょう
ということを
どうやって伝えたらいいのか
あれやこれやと
しているうちに
1日が終わった

H26.11.30

たかだか
10人定員の
デイサービスを
やるのに
おとしよりがいる時間に
わざわざしなくては
いけない事務仕事なんて
作らなければ
あるわけないので
していることは
15年前も
これからさきも
別に変わらない

H26.11.29

ちょっとした目利きが
変に利いてしまうせいで
「これはもうだめだ」
「これからはこうだ」なんて
そういう意味なら
はじめから
勝ち目なんかなかった
はずなのに
へんなの
はじめたからには
先の見えない撤退戦を
じぶんのからだを使いながら
楽しんでしまえば
それで済むはなしなのに

H26.11.28

このようなひとだから
こういうときは
こう思っているはずなので
こういうふうにしたらいいと
あらかじめ
あいての胸の内を
推測するようなことが
少しずつ
今ではまったく
できなくなったのに
「介護」の現場に
居続けている

H26.11.27

認知症老人ということばで
ひとくくりにできるひとなんて
いるわけないのに
そういうことばを
通してしか
そのひとをみようとしない
あげくのはてに
「観察」なんかして
「発見」なんかして
悦に入ってるような
賢しらぶった
腐れインテリには
将来じぶんが
そのような目で
「観察」される可能性を
一顧だにできない
哀しさが溢れている

H26.11.26

ぼくがそばで
支えているときは
おぼつかない足取りでも
誰もみていない場所では
スタスタと
歩こうとする
おばあさんを
ふすまの隙間から
覗くのは
あまりいい趣味じゃない

H26.11.25

あいにく空のお天気で
どんより空気の昼下がり
流れっぱなしのテレビから
美味しいラーメン啜る音
ズルッズルッと響くので
あ晩御飯はラーメンに
一も二もなく決めました

H26.11.24

おとしよりのことだけで
考えたり悩めたり
できていたときが
どれだけ良かったかと
実はそんなときなんて
一度もなかったのに
そんな不毛なことを
思わざる得ない

H26.11.23

エクスキューズを
求めたいのは
わかるけど
それを
自分で言っちゃあ
おしまいよという
ことばばかりが
目につくときは
じゃりン子チエを
観るにかぎる

H26.11.22

つきつめれば
いつか死ぬという
さみしさだけが
なにもかもちがう
あなたとぼくを
つなげる
唯一の

それだけが

伝えたいことかも

H26.11.21

やわらかい日差しが
たっぷり差し込む和室で
昼ごはん
それぞれの食べ方で
お箸やスプーンを
ぎこちなく動かしながら
むしゃむしゃと
口を動かす
おじいさんと
おばあさんを
眺めているだけで
なにかもう
どうでもよくなる

H26.11.20

おたがい名前も顔も
覚えてはいないけど
その場にいないと
「今日は休み?」と
聞くくらいの
馴染みのふたりが
晴れ時々曇り
所によって一時雨みたいな
結局何も言ってないような
話を延々としているのを聞くと
そういう相手がいるのは
うらやましいなあと
いつも思う

H26.11.19

風呂場でおじいさんに
「おまえにおれの
つらさがわかるか」と
つよく聞かれた時
それは分からないし
推し量ることしか
できないけど
それはぼくにも
みんなにも
いえること
当てはまることだから
返事として
最近のぼくのつらいことを
30分くらい
話し続けていると
「そうか悪かった」と
いう返事が

H26.11.18

手に負えない
かなしみや
つらさを
抱えた人と
いっしょにいるとき
もちろん
それを
消し去ることは
できやしないが
なにもないという
退屈なら
請け負うことが
なんとかできると
思い込む

H26.11.17

二人お休みされたので
ひとつの部屋で
集まって過ごそうとしたが
なんども顔を合わしているのに
はじめましてのような
雰囲気をおたがいに
感じる人たちもいて
そわそわしっぱなしなので
結局いつもの場所で
それぞれ過ごした

H26.11.16

運転免許証の更新
大阪府下で
日曜日にやってるのは
ひとつだけなので
必然的に
平日仕事を休めない
ひとたちで
あふれかえっていたが
もともと人ごみが嫌いな
じぶんでも
なぜか感じた
一体感は
これは
どういうことだ

H26.11.15

さむいさむいと
いうほど
さむくないのに
さむいさむいと
言いたくなるのは
年をとったから

H26.11.14

吐く息が白い朝
まだねぼけているぼくが
まだ眠っている凡の
ストーヴや
電気カーペットを
ひとつ着けるたび
すこしずつ
目覚めてくるのが
わかる季節に
なった

H26.11.13

一番苦しそうな時期を
毎日いっしょに過ごした
親と同い年の
おばさんが
3ヶ月前に
驚くような理由で
利用中止になって
今日ケアマネジャーさんから
連絡があり
無事にうちの特養に
入所になりました
おかげさまで
落ち着いておられますよ
妄想幻覚もなく
ほとんど話はできなくなったけど
外に出ることもないですよと
伝えてくれたとき
どんな返事をしたのか
あまりおぼえていない

H26.11.12

帰りの送迎前
いやな内容の電話があり
ちょっとむかむかしながら
送迎をつづけ
助手席のおじいさんを
残すのみとなったとき
おもわず問わず語りで
愚痴をつぶやいてたら
急におじいさんから
「南はどちらですか」と
謎かけのような問いが
あったので
なにかの助言かなと
少し考えて
ふたたび横を見ると
おじいさんは眠っていた


H26.11.11

ぼくを父親と
嫁を母親と
あきらかに分かっているのに
その赤ちゃんを
意味もなく
叩いたり怒鳴ったりする
おばあさんが
歩いて帰ると
玄関を開けようとするのを
止めているとき
ああ
凡を始める前に
カミュの
シシュフォスの神話を
読んどいて良かったと
心底おもう

H26.11.10

たったひとりの
おじいさんがいないだけで
こんなにも
ちがう一日になるとは
一年半いっしょにいる
ということは
こういうことだと
いまさら
思い知らされる

H26.11.9

休みの日に
忘れ物を取りに
凡に来て
ついでだからと
一年ぶりに試しにつけた
ストーブが
煙を上げて
壊れた瞬間
電話が鳴り
一年間来ていたおじいさんが
ひどくおかしくなって
病院に入院するという
はなしだった

H26.11.8

極論でいえば
その日さいしょに
お迎えに上がる
おとしよりに
素直な気持ちで
おはようございますと
言えるよう
生活を
ととのえている

H26.11.7

じぶんがどこにいるのか
これからどうなるのか
そんな不安なきもちが
ふるまいすべてから
分かってしまう渦中の
おばあさんでも
10ヶ月のぼくの息子が
あぶない足取りで
伝い歩きをするのを見て
思わず「あ、あぶないよ」と
震える手を差し伸べてくれるので
こんどはぼくが
手を差し伸べる番

H26.11.6

おとしよりたちの
体調や気持ちの変化で
お迎えの段取りが大きく遅れ
急いではじめた
おじいさんの
お風呂のお手伝いを
いきおい「こなそう」と
しかけたところ
かばんから出した
着替えのシャツや下着の
折り目一つない
ていねいな手触りに
玄関で見送る奥さんの
心配そうな目を思い出し
われにかえる

H26.11.5

いただきますと言って
お茶碗を持った瞬間
目の前のおじいさんが
痙攣して動かなくなったので
いそいで横になってもらい
肩を叩きながら声をかけたら
なぜかぼくのズボンを指差すので
視線を落とすと
右ポケットにおはしを
差し込んでいるのに気づき
「うぁっ」と思わず出した声で
おじいさんが吹き出し
ことなきをえる

H25.11.6

今にも雨が降りそう
という天気は
デイサービスの天敵

H25.11.5

2月に突然亡くなられた
おじいさんの奥さんが
凡に来られることになったので
夕方お家に伺った
この間病院でお会いしたときには
ぼくが誰かは分からなかったのに
家でお会いすると
「あー、おじいさんがお世話になって」と
笑顔で迎えてくれた
玄関に立つぼくの姿を
覚えてくれていたのが
すごくうれしくなって
「また来るようになりました」
とよくわからないことを
言ってしまった

H25.11.4

職員もお年寄りも
おとこだらけの
一日だったので
お昼ご飯に
中華料理を食べに行き
皆で餃子を
お腹いっぱい食べたはいいが
その後が
地獄絵図

H25.11.2

昼から天王寺まで
師匠の奥さんの
浪曲の会を観に
笑えてほろっときて
帰り道
間違えて持って来た
安いイヤフォンごしの
その嘘くさい音に
思わず
iPhoneから
それを引き抜いて
ゴミ箱に
叩き捨てるくらい
生々しかった
こえと三味線の
音のちから

H25.11.1

いつも昼ご飯の後片付けを
手伝ってくれる
おばさんが
今日はいやにていねいだなと
思っていたら
ぱんぱんと
二回手を叩いて
「じゃあこれで」と
すたすたと玄関に向かい
嫁が後に続いて
外のベンチで
話し込み始め
そういえば
一年前の今頃も
そうだったなと
思うや否や
ソファのおじいさんも
ふらふらと玄関へ
山下がそれとなく追い掛け
嫁のおなかは大きいし
ぼくのおなかも大きくなり
月日はやっぱり流れている




H25.10.31

ぼんやりと
始まった一日の朝
送迎車を走らせているとき
突如
千々切れだった
思考の断片が
ひとつのかたちを
結んだと思ったら
一人目のおじいさんを
乗せて走り出すころには
きれいさっぱり
忘れ去っていて
そんな考えは
結局たいしたことないのだと
じぶんに言い聞かすのは
これで何度目か

H25.10.30

お昼ご飯を食べた後
あまりに天気がよかったので
一か八かで
4人のおじいさんたちと
近所の公園に出かけ
しかしやっぱり
鯉にえさを
あげ終わるや否や
二人のおじいさんが
目と目で会話しながら
ふらふらと公園をあとにし
もう一人の職員が
そのあとを歩き
「凡に戻っている」という風に
取り繕おうと試みるも
案の定というか
あっさり凡を素通りし
三人肩を並べて
小さくなっていく
後ろ姿を見ながら
でも天気がよいから
まあいいかと
アデューと
ボンボヤージュと


H25.10.29

人生でいちばんの
二日酔いのまま
すこし眠らせてもらおうと
和室のソファベッドに
横になり
ふと庭を眺めると
たった一日だけ
来てくれた
おばさんのために
飾った花たちが
風に揺れているのが見えて
そういえばこのベッドも
そのおばさんのために
買ったのだったと
気づいたときには
もう眠っていた

H25.10.26

マンションの踊り場で
うちの子どもたちや
その友達たちが
ボール遊びを
熱心にしているのを
タバコを買いに行く道中
見かけたので
人数分ジュースを買って
帰りに手渡したら
本当にうれしそうに
ごくごく飲んで
またボール遊びを再開する
その様子をみたとき
こころになにかが跳ね上がり
ぼくのなかで
500円の価値が
がらりと意味をかえた


H25.10.25

昔よく行っていたお寺の
場所が分かるが
名前が分からないという
99歳のおじいさんのお悩みを
午後から2時間かけて
皆で解決しようと
喧々諤々やっていて
力尽きた頃に
「ところでなんの話しでした?」という
おじいさんからの新たなお題が

H25.10.24

昼ご飯の後
そのおじいさんと
いっしょにいることが
どうしてもつらいと
思ってしまい
しばらく事務所で
書類仕事をするも
自己嫌悪やまず
家に帰ろうかと思った矢先
一年前の記録がひょっこり画面に現れ
やっぱりそのころも
そのおじいさんと
いっしょにいることが
つらそうだったので
少しほっとして
部屋にもどる

H25.10.23

今日で三度目の利用になる
おじさんが
そういえば一度も
「もう帰ります」と
言わなかったなと
嫁の産婦人科受診に
つきあった帰りの
そば屋の入り口で
気づいておもわず
カツ丼を頼んだ

H25.10.22

近所の公園に
昼から散歩に出かけ
池のほとりで
横並びになって
鯉に餌をあげたいが
何ももっておらず
その辺の草やなにかを
「これなんかどうだろう」と
次々に試す
左から
男37歳零細企業社長
男99歳元大手百貨店常務
男90歳元住友化学専務
男35歳零細企業平社員

H25.10.21

再開

金木犀の花が
咲かない
玄関に干している
吊るし柿が
もう甘くなった
秋の気配に
思い出すひとが
いるということ
凡で迎える
二回目の秋だということ
チキンレースは
もう終わりだ

H25.6.25


右斜め前のソファに
座っているおじいさんが
肘掛けを持ち
なんとか立ち上がろうと
お尻を浮かしている
ぼくは目の前の
おばあさんの
もう何度目か分からない話に
相づちを打ちながら
いつ手を支えに行こうか
そのときをじりじり待っている
いつもよりも
おじいさんの右足が
内側に入りすぎていることが
気になってしまい
思わず席を立ってしまう
案の定おじいさんは
「なんでもないんや」と
深くソファに座り直してしまう
「そうですか」と言い
ぼくも席に座り直すと
すぐにおじいさんは
お尻を浮かしはじめる
一つ深呼吸をして
さっきよりもゆっくり
ソファに向かおうとするも
やはりおじいさんは
「なんでもないんや」と
座り直す
ぼくは座る
するとおじいさんは立つ
ぼくが立つと
おじいさんは座る
5回目にぼくが立ったとき
おじいさんと目が合って
いたずらっぽさが
その目に浮かんで
おじいさんと
ぼくのあいだに
見えないシーソーが
あらわれた

H25.6.24


はじめての決算が終わった
こんな
ラーメン屋台を
夜な夜な夫婦で引いてるような
デイサービスでも
「けっさん」は
やってくるみたいで
すこし
笑ってしまった
税理士事務所からの
帰りの車中
誰ともなしに
ざまあみろ
つぶやきかけたが
いいたいあいてが
もう
どこにもいないことに
気づいて
それはしあわせなことだと
おもったり
おもわなかったり

H25.6.23


飼い猫を
お風呂に
入れただけで
あとは
なにもない
完璧な休日

H25.6.22


病院からの
母親の電話で
あのとき
おばあさんが言った
意味をなさない
ことばのいみが
いまさら
わかってしまった
でも
あのときも
今も
どうすることも
できるはずもなく
ただ
相づちを打つだけ
夜風は心地よいだけ
紫陽花は咲き誇るだけ
かなしみはそこにあるだけ

H25.6.20


録画しておいたから
結果を知りたくないから
といっても
おじいさんはテレビをつけるし
ニュース番組を見るし
歩くとこけるかもしれないので
ぼくはその場に居続けるし
耳を塞ごうとしても
難聴で音量40だし
仕方がないにしても
それにしても
この苛立ちは
どうしてくれよう

H25.6.19


どうしても
お風呂に入らなくてはいけない
そんな日に限って
かたくなに首を振るおじいさんに
最後の手段としての
土下座を敢行したら
周囲から笑い声が起きたので
顔を上げると
さっきぼくがお風呂のお手伝いを終え
二人で部屋に帰ってきたおじいさんが
いっしょに土下座をしていた
慌てて止めようとしたが
こちらも頑なで
押し問答を繰り返していたら
土下座されたおじいさんが
黙って風呂場に
向かって行っていた


H25.6.17


OK 余裕

H25.6.16


凡でお世話になっている
おばあさんの娘さんが
自分の田んぼで
田植えを体験させてくれるというので
夕方家族で行った
生まれて初めての田植えだったが
水の中の土は柔らかく
ほどよい温かさで
触っているだけで
きもちよかった
昼間には凡の近くの畑で
子どもと虫取りをしていたら
農家のおじさんたちが
琵琶をくれたり
カブトムシをくれたりした


H25.6.15


仕事が休みの日の雨が
嬉しいと思ったことは
初めてだ

H25.6.14


14時を過ぎた頃
「帰って包丁でやったる」と
おじいさんが言い出したので
まあ帰っても誰もいませんがとか
そうですねとか
聞いたり言ったりしてはみたものの
あまりの暑さのせいか
ぼくの振る舞いに
面倒だという気持ちがにじみ出ていたのか
「黙れ 歩いて帰る」と
床に座り
膝行りながら
玄関へと向かっていく
いよいよ面倒だなという気持ちを
どう沈めようかと
思案しているあいだにも
おじいさんは
玄関の靴箱の開き戸を
側臥位の状態で
開けようとしている
ただ
あまりに距離が近すぎて
開き戸を引いても
からだに当たり
なかなか開かない
何度か繰り返すうちに
いよいよ苛立ちは募り
ここを先途とばかりに
思い切り引くも
勢い余って仰向けに転がり
驚いて手足をバタバタさせた瞬間
おじいさんと目が合った
どちらからともなく
力の抜けた笑いが起きたので
これはいけると
お部屋に帰りましょうと
言うか言わないかのときに
「どうもすいませんなあ
ぼちぼち歩いて帰らせてもらいますわ」
と単に言い方が柔らかくなっただけ
大阪 36度 猛暑日の昼下がり

H25.6.13


娘の誕生日だと
お迎えの車の中で
話していたところ
視界の隅に
何か違和感を感じたので
バックしてみると
道ばたで亀が仰向けになっていた
「これはめでたいよ」
「なにかのご縁やから」と
後ろのおばあさんが言うので
とにかく拾って帰った
だんだんぼくもその気になって
凡に着く頃には
この亀がいれば
商売繁盛で子孫繁栄
万事快調で向かうところ敵なし
くらいにはなっており
甲羅を鷲掴みにして
「どう?」と自慢げに
嫁に見せたら
「近くに池あるから放してきて」と
問答無用の調子
助けを求めるように
おばあさんを振り返ると
「子どもが触ったら黴菌移るしな」
と突然の裏切り

H25.6.12


いよいよ蒸し暑くなってきた
脱衣場で
風呂上りのおじいさんの
両足を丹念に拭き
扇風機で乾かしていたとき
本当は下着くらいはいて欲しいのだが
陰嚢を両手で持ち
裏返すように風に当て
悦に入っている様子をみると
何も言えず
両足の水虫の乾き具合を
おじいさんの目の前で
しゃがんで眺めていたが
顔を上げると
なにか幾何学的な模様をした
陰嚢が目に入り
ぼくは
他人の陰嚢を見つめる為に
今まで生きてきたのかと
なにか形而上的な考えが
浮かんでは消え
おじいさんは
いよいよ立ち上がり
扇風機の前に仁王立ちし始める
揺れる陰嚢
遠くで聞こえるのは
和室の風鈴

H25.6.11



車に乗るなり
「お前ゴミ捨て場に捨てたる」
という捨て台詞を
窓の外の奥さんに
吐き捨てたおじいさんを
一個目の信号の角にちょうど
コンビニのゴミ捨て場があったので
とんっと捨て置こうかなと
思ったがやめた
昼食前
手のひらにできた
いぼを取ろうと
つばをつけて
熱心にこすっていたので
横に座って
ねっとりとした
その手のひらを
とがめるように
無言で見つめていたら
「上からなんか降ってきたんや」と
言う
目を上げると
なるほど
失笑が
天井から
滴り落ちてくるのが
見えた